旧三浦邸。
かつては多くの商人たちがその場に集った。今、そこに商人たちの姿はなく、ひっそりと続き間が広がっている。空間を仕切るものは壁ではなく襖。足の裏に感じるものはコンクリートではなく、しっとりとした畳。中庭に抜ける風。あの空間で何を感じ、何を見つけ、私はどんな作品を置くのだろう。
さて、向かうは南西、高知須崎へ。(八重樫ゆい)
八重樫ゆいは1985年、千葉県生まれ。2011年、東京造形大学大学院修了後、東京を拠点 に活動し、国内外の美術館やギャラリーで発表経験を持つ、今注目される若手美術家です。
近年では、梅津元企画によるαMプロジェクト2016「トランス/リアル—非実体的美術の 可能性」vol.3|末永史尚・八重樫ゆい「Transform/Paint」(http://gallery-alpham.com/history/ vol211/)や2014年に東京オペラシティアートギャラリーで開催された「絵画の在りか」 (http://www.operacity.jp/ag/exh166/)に出品するなど、日本の現代絵画を語る際に外すことの できない作家の一人だと言えるでしょう。
キャンバスに油彩というオーソドックスな絵画の材料を用い描かれる、布生地のパターン を思わせるような色面の、小さく、静かな作品は、作家が独自に設定したルールとシステ ムによる新たな絵画を探求する営為の重なりです。鑑賞者はその画面と対峙することで、 作者の営みとシンクロするような喜ばしさを感じるでしょう。
今展では、八重樫の絵画がアートギャラリーや美術館とは異なる日本建築、旧三浦邸の空 間とどのように調和するのかも見どころの一つです。
展覧会初日には作家が来廊し、須崎市出身の美術家、竹﨑和征氏を交えたアーティストトー クを行います。
八重樫ゆい
1985年千葉県生まれ。
2009年東京造形大学造形学部美術学科絵画科専攻修了後、同大学院研究科美術研究領域修 了。
現在は東京を拠点に制作活動を行う。
主な展覧会
2017年「The gap between the fridge and the cooker」、ザ・モダン・インスティチュート、グ ラスゴー(グループ展)、2015年「To and from home」ミッドウェイコンテンポラリーアー ト、ミネアポリス(個展)、「demeanor」シェーン・キャンベルギャラリー、シカゴ(個 展)2014年「絵画の在りか」東京オペラシティーアートギャラリー、東京(グループ 展)、「行儀と支度」 MISAKO & ROSEN、東京(個展)
※須崎市では例年、「現代地方譚 アーティスト・イン・レジデンス須崎」を行なってい ますが、八重樫は2015年の第3回にCOBRAとの連名で参加しています。今回の個展は今秋
開催予定の「現代地方譚5」のパートナープログラムとして企画されました。