三浦商店は、木造二階建て塗家造、大正時代中期の建築で、「日本近代建築総覧」(日本建築学会編)にもその名が見られる、高知県では代表的な商家建築です。分厚い漆喰の軒を持った一面黒塗りが特徴的で、三層になった高い軒が、一、二階の城壁のようにせり出して四辺を巡っており、色褪せた黒壁がこの建築の重厚さを増し、風格を感じさせます。三浦商店は戦前、コウゾ、ミツマタなど、和紙の原料や製品を商い、朝鮮半島にまで交易船を出していたと伝承されています。天然の良港に恵まれた須崎は、近隣の物資の集散地として栄えたましたが、三浦商店もまたそんな有力商家の一つでした。旧道交差点の角地に立ち、須崎周辺の林産物や紙問屋として繁盛しました。高い漆塗の格天井などが豪商の名残を留めています。
桁行五間(九・九一メートル)、梁間六間(十一・七メートル)、木造切妻作り平屋建て、桟瓦葺の建造物です。南北面に下屋があり、下屋屋根は中央での右瓦と左瓦の葺き分けになっています。
南側軒下部分は土佐特有の良質のヒノキ丸太が下屋受けの軒桁として使用されており、柱や梁などの構造体としてもしっかりとした作りとなっています。
旧三浦家住宅は四万十川流域の林産物の交易で京阪神との交流があったことから、主屋は遠方からの客の宿泊や宴会などに使用され、商家建築住居としての構造や意匠が残る、大正期の交易のあとを物語る貴重な建造物です。
桁行四間半(八・六七メートル)、梁間三間半(六・九二五メートル )の木造二階建て、土蔵造り寄棟造り桟瓦葺の特徴を持つ建造物。店舗として使用されていたこの建物は、二つの出入り口があり、外壁は全面松煙漆喰塗りで黒の鏡面に仕上げられています。
交差点の角に位置しており、北側に付属する白塗りの蔵との色彩対比が珍しく、交差点から見た景観に大きな影響力を与えています。敷地全体の中心的な建造物でもあり、当時の町並みの雰囲気を色濃く残す建造物です。
桁行二間半(四・五三五メートル)、梁間二間(三・五五メートル)RC造切妻造り二階建ての建造物です。
南北に長い切妻屋根のため、南からの風に対処するため左瓦を、西側屋根には左瓦、東側屋根には右瓦が使用されています。蔵の開口部以外は土佐漆喰仕上げで、北側の壁面は一、二階ともに仕切りのない全面土佐漆喰仕上げになっています。
内部は、入り口部分に鉄製の扉が使用されており、一階内部には当時の鉄製金庫がそのまま残っています。
桁行五間(九・九一メートル)、梁間三間半(六・九二五メートル )木像寄棟造り桟瓦葺きの平屋です。座敷、縁側、厨房で構成され、座敷天井は竿縁天井の柾目板張り上げ、厨房天井は洋風トラスのキングポストトラスの小屋組を一間おきに配置し、柱のない空間を生み出しています。
※1 屋根の中央での右瓦と左瓦の葺き分けは、高知県の海岸集落でよく見られる、東と南からの強風に対処した土佐の伝統的な屋根瓦の葺き分けの手法です。
※2 塗家造りは、木造商家の防火構造として広く普及している様式で、漆喰を塗り固めるところからこの名が生まれました。一般的には白色ですが、 三浦邸店舗部分で使用されている黒い漆喰は煤を混ぜてつくられています。