2014年から続く「現代地方譚」は県外美術作家によるアーティスト・イン・レジデンスと成果発表展示を核とし、演劇公演、短編映画上映等で構成されるジャンルを跨いだアートプログラムです。第6回となる今期のテーマは「そこに生き、そこに在る。」とし、豊かな自然の恵みにあふれる日常と隣り合わせの切迫したカタストロフィへの不安を対照し、これからもこの場所に在り続けるための“歴史と今”を考えます。
文化(culture)の語源が示すように、私たちは土地を耕す事(cultivate)で暮らしを開き、精神を豊かにして来ました。文化的な生活とは本来、自然に寄り添った営みであったのではないでしょうか
自然と文化とはしばしば対立項として扱われます。今日、情報網の発達によって世界が接続され、グローバルな価値観が広まることで、私たちの生活と身近にあった自然との乖離はさらに進んでいるようです。
自然と対峙し、克服する事で作り上げた社会は今、様々な問題を呈しています。自然の大きな反動を目前に控え、もう一度足下の土を耕す事を始めたい。この土地の自然に寄り添った暮らしの“術”=アートを探りたい…。
須崎市は豊かな海の恵みをはじめ、自然の魅力に溢れた町です。近年は、地域の若い世代が中心となった
地域振興の取り組みが町に活力を生んでいます。また行政による子育てしやすい環境づくりのサポートも改善され、官民それぞれに次世代を見据えた町づくりが進められています。
しかしその一方、地勢的にいつ起こるかもしれない災害への不安も日常に伴います。過去に津波を経験した世代は高齢化し、被害の伝承が困難になりつつあり、実生活の中で災害について話題を持つことは少なくなっています。また、テクノロジーに頼った便利な生活に慣れた私たちは被災時にどう立ち回れるのでしょうか。
私たちは子育て世代と共にアート活動と連動したプログラムを通じ効果的に防災を考える機会を持ち、災害へ備える意識を更新し、この町の豊かな自然と共に「生存」する力を培いたいと思います。
2018年秋-冬にかけて美術、演劇の分野の各アーティスト達が須崎を訪れ、リサーチと聞き取りを行いました。本展では須崎での交流を通じて生まれた作品が展示、上演されます。
プログラム
●AIR アーティスト・イン・レジデンス須崎
[レジデントによる作品展 そこに生き、そこに在る。] 2019年1月19日(土)~2月17日(日)
五月女哲平、高山陽介、モンデンエミコ
会場:すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
時間:10:00-17:00
料金:無料
月曜日は休館 ※2月11日(月)は開館、翌12日(火)休館
●演劇
[須崎のまちの物語Ⅱ] 2019年2月2日(土)・3日(日)
脚本:谷相裕一、サカシタナヲミ、西本一弥
総合演出:領木隆行 監修:内藤裕敬(南河内万歳一座)プロデューサー:吉田剛冶
会場:須崎市立市民文化会館大ホール
時間:13:30開場 14:00開演
チケット:全席自由 前売1,000円、当日1,500円
前売り券販売所:須崎市立市民文化会館(0889-43-2911) すさきまちかどギャラリー(050-8803-8668)
脚本家が市民の人生を丁寧に取材し、オリジナル脚本を作り上げます。公演は公募により集った参加者とともに、
リーディング作品として発表します。
●映画
[すいっち] 2019年1月19日(土)~2月17日(日)
監督:甫木元空
会場:錦湯
時間:10:00-17:00
料金:無料
月曜日は休館 ※2月11日(月)は開館、翌12日(火)休館
須崎市立新荘小学校で行った映画のワークショップを起点として、児童たちと「遊んだ」感覚を頼りに、須崎を舞台にした短編映画を制作します。かつて須崎の人々に親しまれた銭湯「錦湯」で上映します。
2019年1月19日(土)オープニング会場にて生演奏上映封切。
●資料展示
[須崎における寺田寅彦] 2019年19日(土)~2月17日(日)
構成:甲斐友太(須崎市地域おこし協力隊)
会場:すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
時間:10:00-17:00
料金:無料
月曜日は休館 ※2月11日(月)は開館、翌12日(火)休館(火)休館
「天災は忘れたるころやってくる」という言葉を残した物理学者・寺田寅彦は明治34年から翌年4月まで療養のため須崎に滞在しています。須崎でどのように過ごし、どんな交流があったのか、様々な資料から読み解きます。
関連プログラム
[オープニングレセプション] 2019年1月19日(土)
会場:須崎駅前しんじょう君の倉庫
時間:17:00開場
料金:キャッシュ・オン制
AIR作家も主席してのレセプションです。甫木元空監督の映画「すいっち」も生演奏で上映封切します。
[防災植物ワークショップ] 2019年2月3日(日)
集合:すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
時間:10:00-12:00
料金:1000円
自生する食べられる野菜を知って、美味しく食べる方法を身につけるワークショップです。まちかどギャラリーから城山までのルートで見つけた野草を調理して試食します。
[須崎銘品館6]
・物販 会期中の木・金・土・日
会場:Cona-Café 暮らしのねっこ内
時間:10:00-17:00
須崎市内外から厳選した物産品のほか、高知生まれの防災食品や防災グッズなども販売します。
・飲食 会期中の土・日・祝
会場:すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
土・日・祝日限定で高知県内の人気の飲食6店によるカフェ営業があります。
営業時間は出店者により異なります。
北村和也展 [唯 の 柿 の 木] 2019年19日(土)~2月17日(日)
会場:Art nest YOMO チェルベロコーヒー内
火・水曜 休廊
前回の現代地方譚5では県内作家としてグループ展示に参加。近作では、とある一本の柿の木をモチーフに展開している北村和也による個展を開催します。
アーティスト・イン・レジデンス須崎について
アーティスト・イン・レジデンス(AIR)とは、芸術家が須崎市に一定期間滞在し、住民との交流、地域資源の活用に取り組みながら作品制作を行い、その成果を展示・発表するアートプロジェクトです。今日的な芸術表現を、作品の生まれる現場に立ち会ったり、作家との交流を通じて理解し、楽しみながら地域課題の解決の糸口を探ります。
須崎市の旧中心市街地はかつて商業の集積地として賑わいを見せていましたが、少子化高齢化が進み、
消費・流通の構造が変化する中でシャッターを下ろす店が増え、現在は人通りもまばらな商店街になってしまいました。私たちは地域再生の手段として、以前の商業的な賑わいによる復興を目指すだけではなく、文化的な豊かさを育むことで地域に新しい価値を生み、素通りされない街にしていきたいと考えています。AIR須崎はそうした試みの1つとして2014年に始まりました。
これまで、延べ30名以上のアーティストがこの地域に滞在し、地域住民との交流を深めてきました。アーティストの滞在拠点や展示会場として、街に点在する空建物を活用することで、展示を観るために街を回遊する人の流れも生まれ、活用した物件に入居が決まる事例も出ています。アーティストのユニークな活動を目の当たりにすることで街に活気が生まれ始めています。